ジャーナリスト Kei Nakajima

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特筆記事

2004年3月6日(土)
特筆記事
『オアシス』
出演:
ムン・ソリ、ソル・ギョング、ほか(韓国映画)
★★★★
特筆記事

内容:刑務所から出所したばかりの男性(ソル・ギョング)と、脳性麻痺で体が不自由な女性(ムン・ソリ)が主人公。監督は「ペパーミント・キャンディー」で高い評価を得たイ・チャンドン。前科3犯で出所した男は、交通事故で死亡させた被害者の娘に会い、最初は興味半分で近づいていくが、しだいにお互いに惹かれ合っていく物語。タイトルになっている「オアシス」とは彼女の部屋の壁にかけられたタペストリーに書いてある文字だ。家族からも社会からも見離された2人が本当に心を通わせる。

感想:脳性麻痺の女性を演じたムン・ソリが新聞のインタビューで「撮影終了後も首が曲がってしまって病院へ行った」と話していたのでどんななんだろう、と思って映画を観たが、「そりゃ、そうだろう」という感じ。とにかくその演技は半端ではない。すごい!としかいいようがない。私は取材でたまたま脳性麻痺の人に会ったことがあるので、脳性麻痺にどのような特徴があるかは知っていた。しかし、健常者が演技でここまで表現できるのか。鬼気迫る演技とはまさにこのことだろう。寒気すら感じるぐらい、脳性麻痺になりきっていた。障害者の恋愛や性を真正面から描いた作品だが、単に障害者を際物的に扱うのではなく、この映画ではもっと別の、人間の差別意識、世の中の不条理、弱者の存在について考えさせる。とくに女性が家族から疎まれ、外からカギをかけられた狭い部屋でひとりぼっちでラジオをつけて暮らしている姿。不自由な手で男の自宅に一生懸命電話をかける姿にはそれまでどんなに淋しかったか、と涙が出る。女性が男性に「どんな仕事をしているの?」と不自由な口でやっとしゃべる場面がある。前科3犯でろくな仕事もない男が「自動車の修理さ」と投げやりに答えると、彼女は「いいな。私も仕事をしてみたい」とポツリという。言葉がうまくしゃべれなくても、体が自由にならなくても、心は正常だ。ひとりの女性として平凡でも普通に生きたい、という気持ちは誰にだってあるものだ。ムン・ソリのすさまじい演技は最後まで続く。クライマックスで幸せになるわけでもなく、決してほっとする瞬間のない暗く重たい映画だったが、強く心に残った。名作とはいえないかもしれないが、こういう映画があってもいいだろう。


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