ジャーナリスト Kei Nakajima

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特筆記事

2009年5月20日

『スラムドッグ$ミリオネア』
出演:デーヴ・パラル、アニル・カプールほか
監督:ダニー・ボイル
★★★★★



内容:インドを舞台に、テレビのクイズ番組に出演して注目を集める少年がたどってきた人生をボリウッド風のタッチで描く。テレビ番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、賞金を獲得していくジャマール。しかし、過去最高の2000万ルピーという賞金を前に「スラム街で育った少年に正解がわかるわけはない」と疑われ、警察に逮捕されてしまう。警察の尋問によって、少年の過去が明らかになっていく。

感想:映画の冒頭は日本でも放送され、有名になったテレビ番組「クイズ$ミリオネア」でジャマールと司会者が対峙するシーンから。ジャマールは医者も弁護士も答えられない難しい問題を次々と回答していく。最初は驚き、褒め称えていた司会者も、しだいに不正を疑い、警察に告発してしまうのだ。ジャマールは逮捕され、拷問を受ける。映画はクイズ番組のシーンと、ジャマールの少年時代を交互に、スピーディーに描いていく。ジャマールが育ったムンバイのスラムの悲惨さは目を覆いたくなるほどだ。孤児のジャマールは兄とともに盗みを働いたり、露天の商売をしたりしながら、必死で世の中を生き抜いていく。小学校にすら通えなかったが、貧困の中で教えられたことがクイズの問題として出題された。無学のジャマールは「答えを知っていたから」クイズに答えられたのだ。

 私も数年前にインドに行ったことがある。取材で北部3都市(ニューデリー、ジャイプール、アゴラ)を周遊する豪華な旅だったが、貧富の差を見せつけられた。バスの車窓から目に飛び込む人々は非常に貧しく、絶望の渕から這い上がれないことをひしひしと感じさせた。気温40度以上の炎天下でも、汗を流すわけでもなく、あきらめきったように、ただ黙々と畑仕事をしているのだ。そこには、日本人がいう「格差社会」という一言では到底足りない、本当の格差や変えられない貧困があった。映画はテンポのよいリズムでジャマールを取り囲む過去と現在が映し出され、まるでジェットコースターに乗っているように進んでいく。救いはジャマールが初恋のラティカと再会でき、最後に結ばれるところだ。ラティカという女の子がとてもかわいらしい。映画宣伝用のキャッチコピーは「運じゃなく、運命だった」。インドの貧しい人々はこの映画をどのように見て、受け止めるのだろうか。アカデミー賞で9部門にノミネートされたというこの作品から、ハリウッドの衰退も透けてみえるようだ。


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