ジャーナリスト Kei Nakajima

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特筆記事

2010年7月21日(水)

『オーケストラ!』
フランス映画
ラデュ・ミレイレアニュ監督、アレクセイ・グシュコフ、メラニー・ロラン
★★★★



内容:かつてはボリショイ交響楽団の一流指揮者だったが、ソ連時代の圧政で地位を奪われ、その挙げ句に清掃員となってしまったアンドレ(主人公)が、ある日、出演できなくなった楽団の代わりにオーケストラを探しているというファクスを偶然見つけ、急きょ昔の仲間を集めてコンサートに出演しようと奮闘する感動作。

感想:前評判が非常に高い映画で、クラシックが大好きなので見に行った。フランス映画だが、主人公はロシアの元一流指揮者で、ロシアとフランスを舞台に展開していく。アンドレがどのような事情で指揮者の座を奪われたのかは明確には描かれていないが、指揮者の座を降りてから30年後の現代から物語は始まる。彼は落ちぶれた清掃員として劇場の清掃をしているのだが、かつての栄光が忘れられず、楽団のリハーサル中なのに、つい清掃しながら指揮棒を振って怒られる始末。妻からも愛想をつかされている、つまらない日常。しかし、そんな彼が1枚の運命ともいえる重要なファクスを見つけてしまった。そこには出演できなくなったオーケストラの代わりを探していると書かれていたのだ。

 なぜかここで「ピン!」ときてしまったアンドレ。偽の楽団を結成しようと思いつき、昔の仲間に声をかけて「一流オーケストラ」に成りすますことを決意する。展開が速すぎて「こんなのあり?うそ、ありえないでしょう?」と思うのだが、そこは映画。ありえないと思いながらも「ありかも」と思えてしまうほど展開が早くて、おもしろい。何とか楽団をそろえていざ公演先のパリへと向かうアンドレたち。ところが、パリについたとたん、みんな自由を謳歌しようとバラバラに散らばってしまう。公演間際になってもつかまらず冷や冷やするが、最後にはすばらしい演奏で幕を閉じるのだ。
 
  30年前のソ連(ブレジネフ時代)のことをまったく知らなくても、単純に映画として楽しめるのがいい。オーケストラもすばらしい。名曲が次々と演奏されるので、クラシック好きにはたまらない音楽映画だといえる。だが、細かいところが理解できたらきっと奥深いすばらしい映画なんだろうなと思う。それはオーケストラの団員たちがロシア人だけでなく、東欧ユダヤ人だったりロマ人を含んでいたりすることからわかる。(ロマ人は北インドのロマニ系に由来する移動型民族)。監督自身が1980年、共産党政権下のルーマニアから亡命したユダヤ系であるだけにマイノリティも細部まで描いている。また、フランスでアンドレが出会ったバイオリニストとアンドレとの運命的な出会いは胸を打つ。最後に演奏されるチャイコフスキーのバイオリン協奏曲は圧巻。ブレジネフ時代のソ連のことを少しでもわかる人が見たら、感動は何倍にもなったことだろうと思う。今もロシアにはアンドレのような人がたくさんいるに違いない。
(8月11日記)


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