ジャーナリスト Kei Nakajima

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特筆記事

2010年10月1日

『小さな村の小さなダンサー』
オーストラリア映画 ブルース・ベレスフォード監督、ツァオ・チー、ブルース・グリーンウッド他
★★★★



内容:文化大革命のさなかの1972年、山東省の小さな村に住んでいた11歳の少年、リー・ツンシンはある日、バレエの才能を認められ北京へ。北京舞踏学院で厳しいレッスンを受ける。文革終結後、アメリカからきたバレエ団の芸術監督の目に留まり、リーはついにアメリカへ。アメリカで自由な空気を吸い恋も経験。しかし滞在延長が認められず中国領事館に監禁され強制連行されそうになり亡命を決意。亡命から数年後、プリンシパルに昇格し、世界敵なトップ・ダンサーとなる。

感想:原題は「毛沢東の最後のバレエ・ダンサー」という、実在のバレエ・ダンサー、リー・ツンシンの自伝だ。リーは1961年、山東省の生まれだというからまさに少年期に文革時代を過ごした世代。身体能力を認められて11歳で北京にいき、そこから本格的にバレエの道を歩むというストーリー。内容は原作に忠実に、リーの半生を描いている。
いちばんよかったのは主役のリーをプロのバレエ・ダンサーであるツァオ・チーが演じていること。ツァオ・チーは英国で活躍するバレエ・ダンサーでリーと同じく北京舞踏学院を卒業している。このような映画を撮る際、最大の問題は「バレエを実際に踊れるのか」「スタントを立てるのか」といったことだろうと思うが、ツァオはバレエだけでなく、中国語も英語も完璧にこなし、自然にリー本人になりきった。そこがこの映画が成功した最大のポイントだと思う。
実際、ツァオの時代には海外留学も珍しくはなくなったであろうが、リーの時代に、海外に行くなどということは奇跡的に大変なことだった。それは映画の中にもよく描かれている。アメリカの資本主義に接して戸惑うリー。そしてビザが延長されず中国領事館に監禁される場面。リーは幸運にしてそのままアメリカに亡命でき、故郷の家族にも危害が及ぶことはなかった。世界的なバレエ・ダンサーとなって今はオーストラリアで平穏に暮らすという彼は、まさにこの時代の中国人としては幸運中の幸運な人物といえるだろう。もちろん、そこには本人の血のにじむような苦労もあったことは言うまでもないが。
リー本人がプログラムの中で語っているように、1970年代の山東省の農村の風景や家のかまど、壁の質感などが記憶の通りで「まるで再現したかのように」描かれているのも興味深い。都会に住む若い中国人が見たら、まるで外国映画の話のように映るのではないだろうか。暗い時代の中国の奇跡の物語としても、最後はすっきりとした、晴れやかな気分になれる映画だ。(2010年11月12日記)


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