ジャーナリスト Kei Nakajima

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特筆記事

その19
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変わるマカオと変わらないマカオ

 今年1月、マカオを訪れた。昨年8月にマカオの大型リゾートホテル&カジノ「ザ・ベネチアン」を訪れて以降なので約5ヶ月ぶりだ。昨年訪れたときは7、8年ぶりとあって、フェリーターミナルから見えたカジノ「サンズ」や建設中の「グランド・リスボア」のきらびやかさに目を丸くしたものだった。巨大な「ザ・ベネチアン」に缶詰状態だった前回と違い、今度の旅では町歩きをする時間が取れた。マカオはマカオ(半島)とタイパ島、コロアン島の3つからなる。まず、旧市街で古い町並みが残るマカオを歩いた。

  マカオのシンボルであり世界遺産にも登録されているセナド広場から聖ポール寺院までは最もマカオらしい風景が広がっている。週末ともなると、広東省など中国からの観光客がどっと押し寄せて広場は黒山の人だかりとなるが、平日の昼間はそれほどでもなく、まだまだのんびりとしている。青い目をした中国人とすれ違ったり、洗濯物を干している家もちらほらあったり。石畳のゆるい坂道に縦列駐車している風景は、まるでヨーロッパの坂道を見ているようだ。細い路地に入るとバケツに数種類の花を入れて売っているおばさんや、干し魚の店、屋台のラーメン屋、壁にくもった鏡をかけただけの「青空床屋さん」もある。中洋折衷建築の貴重な建物もまだあり、それらを見ているだけでも十分に楽しめる。こんなところはまだ再開発の手がついていないようだ。

 一方で大きく様変わりしているのはタイパ島だ。米国資本の「ザ・ベネチアン」のオープンを皮切りに、その周辺に大型ホテルが建設中なのだ。「コタイ・ストリップ」と呼ばれる大通りはまるでお台場か幕張にあるようなビルばかりだ。日陰も、小さな商店もない。ビルの間をとぼとぼと歩いているのは中国からの出稼ぎ労働者の集団ぐらいだ。マカオ国際空港もすぐそばにあり、海外からリッチな人々がきても、空港から10分でホテルやコンベンションセンターに到着でき、ホテルに続くショッピングセンターで買い物もできるようにする構想だという。

 ここには石畳も、「青空床屋さん」もない。コロアン島との間も完全に埋め立てられてしまい、地形も変わってしまった。数年以内に10数軒の外資系ホテルが建つ予定で、周辺には真新しいマンションも建設されている。橋を一つ渡っただけで、こんなにも違うのか、と驚いてしまう。あまりにも速い変化に対しては、きっとマカオ人自身が驚いているのではないか。だが、中国人観光客と米国資本に飲み込まれたマカオの変化は、もはや止めようがない。マカオはこれからどんな方向に進むのだろうか。香港との対比という点でも、とても興味深い。

(2008.4.10記 文・写真 中島 恵)


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