ジャーナリスト Kei Nakajima

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特筆記事

その8
特筆記事

東京の中にある沖縄と台湾を訪ねて

 2003年夏、丸2日間に渡って行われた「沖縄大学・又吉学級学外学習会」に参加した。案内人である又吉盛清(またよし・せいきよ)先生は30年も前から日本統治下の台湾植民地について研究を行い、台湾各地を地道に訪問して歩き「日本植民地下の台湾と沖縄」、「台湾 近 い昔の旅」などを出版されている方だ。以前から一度お会いしたいと思っていたところ、東京で学習会が開かれる、という情報を入手した。しかもテーマは「東京のなかの沖縄と東アジア」という私も興味のあることだったので、さっそく参加してみた。

 学習会の行程は次の通りだった。

 1日目:巣鴨プリズン跡→新宿御苑→明治神宮聖徳記念絵画館→明治神宮→東郷神社→乃木神社→青山墓地→多摩霊園
2日目:靖国神社→靖国神社遊就館→琉球屋敷跡→皇居北の丸公園→国会議事堂→帝国ホテル→鹿鳴館→築地本願寺→回向院→湯島聖堂→谷中霊園→寛永寺・葵の間→津梁院・琉球王家尚昌墓碑

 朝9時にスタートし、夕方5時過ぎに終えるにはあまりにもハードスケジュールだ。しかし、単にその建物を訪問して歩くのではなく、各所各所での又吉先生の解説や用意されたプリント資料がすばらしく、本当に勉強になった。また、参加者の多くが沖縄からやってきた中高年の方々だったが、沖縄の皆さんの勉強熱心さに心を打たれた。1日目に見学した新宿御苑は個人的に何度も行ったことがあったが、私たちが訪ねたのは日本庭園の湖畔にある純台湾風建築の「台湾閣」だった。昭和天皇のご成婚を記念して昭和3年に台湾住民の拠金によって建造されたものだという。「明治神宮」では大鳥居を見学した。素材の大ひのきは台湾の丹大山(阿里山の連山)から運んだ樹齢1500年のものだそうだ。昭和天皇の大葬の礼のときに白い菊の花が日本だけで間に合わず、台湾から緊急輸入したという話を聞いたことがあったが、身近なところで台湾と日本の意外な結びつきを感じることができた。

 2日目はまず靖国神社に行った。新しくなった隣接の「遊就館」では自由行動となって、各自展示物を見学したが、バスに戻ってみると沖縄出身で現在は東京に住んでいるという女性が「沖縄の地上戦のことは触れられていなかったみたい」とポツリと話したのが印象的だった。「琉球屋敷跡」は、靖国神社からもすぐ、現在の九段高校の場所だ。明治12年に政府は「琉球処分」によって沖縄県を設置し、琉球王国は滅亡したが、琉球藩王である尚泰は華族に列して屋敷を与えられ、東京に居住していたという。国会議事堂は小学校の修学旅行以来の訪問だった。国会議事堂中央広場の柱と壁は沖縄産の琉球石灰岩(トラバーチン)が使用されているのだという。トラバーチンは旧満州国の満州国中央銀行にも使用されているということだ。学習会のメンバーが珍しそうに柱や壁をさわっている姿を見て、議事堂の案内係の人は不思議そうな顔をしていた。いちばん最後に上野・寛永寺近くにある津梁院・琉球王家尚昌墓碑を訪れた。尚昌は琉球最後の王である尚泰の孫。英国オックスフォード大学に留学したことがあるという。中国旅行の途中、34歳で死去し、ここに眠っている。

 2日間、東京の町をハードスケジュールで動き回ったが、見るもの、聞くもの初めてのことばかりで、本当に感動した。こんなに狭い東京の一角を歩くだけでも、日本、琉球、台湾、そして世界とつながっているものがたくさんある。ふだん何気なく見ている建造物や神社仏閣にもさまざまな歴史があることをフィールドワークを通じて知った。これからも、こうした学習会に参加して、昔と今を結ぶ歴史について学んでいきたいと思う。

(文・写真/中島恵)


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