ジャーナリスト Kei Nakajima

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特筆記事

その17
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中国でマナー向上キャンペーンを実施 合言葉は「做可愛的上海人」

 2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博を控えた中国では、2006年からマナー向上キャンペーンを始めた。国営新華社通信などの情報によると、政府は「礼儀の国のイメージが損なわれている」と危機感を示し、良好な国際イメージを確立するという目的で、「旅行先で大声で騒ぐ」「電車やバスを降りる人を押しのけて乗り込む」「列に並ばない」などの非文明行為の撲滅を目指しているという。

 上海市も2月から「100万家庭礼儀学習キャンペーン」を開始した。そのキャッチフレーズは“做可愛的上海人”(愛される上海人になろう)。幹線道路や地下鉄駅の構内など各所に大きな看板が掛けられている。3月にはキャンペーンの一環として、100項目に渡ってマナーを記載した「市民ガイドブック(市民手冊)」を発行した。定価30元(約500円)で販売している。ガイドブックの中身は?というと、「上半身裸やパジャマ姿で外を歩かない」「鼻毛は短く切る」などの具体的行為が書かれている。また、言葉遣い、食事のマナー、贈り物のマナー、道路の歩き方までもくわしく列記されている。

 私も初めて中国に行った1988年当時、パジャマ姿で自転車に颯爽!と乗り、街を走り抜けている人を見かけて、ものすごく驚いたものだった。そのときは「きっと何か大慌てでしなければいけないことでもあるんだろう」と思って、見ぬふりをしてきた。だが、その後も中国人の「パジャマ外出」を目撃する機会は続いた。つい最近も上海の南京路を歩いていたところ、路上パフォーマンスを見物しているパジャマ姿の女性を発見した。今となっては、私もそれを見て噴き出すとか、びっくりするとかいうより、むしろ食い入るように観察できるようになった。その女性はバンドつきのサンダル(つまり外出用)に、くるぶしまでの短いストッキングをはき、首には小さなネックレスもしていた。しかし・・・着衣は、というと、上下ともに正真正銘のパジャマだった(※日本人が家の近所のコンビニになら着ていくようなスウェットではない)。しかも、何度も洗濯してすっかりくたくたになり、肌になじんでいる、うっすら花模様のいい感じ(笑)。病院で点滴をぶらさげて歩いているのが似合いそうなお姿なのだが、その女性はそんな格好でパフォーマンスを見たあと、人通りの多い南京路を闊歩していった。
きっと比較的おしゃれな上海人より、北京のほうがパジャマ人口密度は高いと思うのだが、それにしても、それをマナー項目にわざわざ入れ、中国人がきらいな規則で防ごうというキャンペーンをやるっていうのはどうなんだろう?それで効果があがったとしたら、もちろんすばらしいことだが(お金をあげたらマナーを守るような気もする)でも、なんだか釈然としない。

 都市部の新中間層は、日本人と同じように情報に敏感で、ネットを使いこなし、自動車もマイカーも手に入れようとしている。一部の富裕層は、「財富公館」とか「テムズタウン」なんていう豪邸に住んで贅沢三昧している人もいる。とっくに「衣食足りて・・・」なんとやらの時期は過ぎていると思うので、中国人がマナーを守らないのは別の理由のような気もする。もしも、中国人が欧米並みのマナーを身に着ける日がきたとしたら、きっとそのときは4000年の歴史を誇る中華人民共和国ではなく、別の国になっている(?)んじゃないか、とすら思う。

(文/中島 恵)


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