ジャーナリスト Kei Nakajima

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特筆記事

その6
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南北冷戦の象徴、板門店へ

 朝鮮戦争の休戦からちょうど50年目という2003年、私は韓国と北朝鮮の国境にある板門店(パンムンジョム)に出掛けた。出掛けた、といっても、ここは一人で勝手に行くことは許されない場所。朝鮮半島を分断する軍事境界線にあり、南北両側それぞれ2キロづつが非武装地帯になっていて、立ち入り禁止地域だからだ。板門店に行くには事前に韓国の特定の旅行会社に電話予約し、申し込みをしなければならない。ツアーは日帰りで2、3の旅行会社のみが主催し、それぞれ毎日実施されている。7時間の1日コースの場合、料金は昼食つきで7万ウォン(約7000円)。外国人を対象としたツアーで、韓国人は参加できない。韓国人で板門店に行く場合は、事前に申請をしてから許可がおりるまでに何週間も時間がかかるそうだ。日本人の場合は、当日パスポートと予約番号、規定の服装をしていけば、誰でも問題なく参加できる。服装は、ジーパンやTシャツ、ノースリーブ、カカトのないサンダルの着用は不可というもの。著しく派手な服装も「ふさわしくない」と判断されるため、注意しなければならない。

 参加できるのは外国人だが、実際に参加している人の大半は日本人だった。私が申し込んだときは約70人が参加し、バス2台で出発したが、そのうちアメリカ人が約20人という構成だった。ガイドさんは日本語担当、英語担当がいる。板門店までの約1時間のバスの中で、朝鮮戦争の経緯、悲惨さ、北朝鮮の現状などを解説してくれたが、日本人の中には居眠りしたり、おしゃべりばかりしている人が何人かいて、とてもガッカリした。途中で展望台に登り、イムジン河をはさんで北朝鮮側の農村を眺め、JSA(共同警備区域)の中にあるアメリカ兵のためのキャンティーンで昼食を取った。その後、南北の兵士が真近で睨み合いをする軍事停戦委員会のブルーの建物の中まで入った。たまたま窓の外には北朝鮮兵がいて、両方を目にすることができた。

 このツアーに参加する前、映画「シュリ」や「JSA」、「二重スパイ」を見て漠然と板門店に興味を抱いていたとき、偶然、板門店に行ったことがあるという昔の同僚に再会した。その人は「板門店に行けば韓国の見方がかわるよ。韓国語を勉強しているなら絶対見たほうがいいよ」と言ったが、本当にその通りだった。日本のすぐ隣の国で、今も冷戦状態が続いていることを身体で実感することができた。韓国人は日本にはない、重荷を常に背負っているといえるだろう。朝鮮戦争は終戦ではなく休戦に過ぎない。韓国の太陽政策が正しいのかどうかわからないが、いつか、あの非武装地帯がなくなる日がくるだろう。北朝鮮問題が世界的にクローズアップされているが、日本人にとっても他人事ではない。板門店で改めて平和の尊さを考えさせられた。

(文・写真/中島 恵)


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