ジャーナリスト Kei Nakajima

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特筆記事

その7
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日本で唯一の山東料理最高級調理人が東京・四谷に

 ドキュメンタリー映画「味」を観た。日本で唯一、中国・山東省から魯菜特級厨師(山東料理の最高級調理人)の認定証と、正宗魯菜伝人(伝統的な山東料理の伝承者)の名誉称号を受けた中国料理人の夫婦の人生を描いた内容だ。映画は日本人の夫婦がなぜ中国で料理の腕を認められたか、その半生をありのままに綴っていて、とても興味深かった。妻は78歳、夫は73歳、佐藤さんという老夫婦が主人公だ。

 妻は戦前の1925年に中国・山東省済南で生まれ、20代前半までを中国で暮らした。当時、中国料理界では女性料理人を認めていなかったが、何とか修業を許され老板(親方)から伝統的な山東料理を厳しく仕込まれた。それが何十年もののち、日本で最高級料理人として認められることになったのだ。

 中国では1960年代後半から文化大革命の嵐が吹き荒れた。文学や音楽だけでなく、高級中華料理店も軒並みたたき壊されたため、いま伝統的な料理を継承する者は少ない。しかし、佐藤さんは日本に引き揚げたことにより、たまたま「味」を守り続けることができたのだ。現在、夫婦は東京・四谷駅の近くで中華料理店「済南賓館」を経営している。砂糖やラードを一切使用しないのが伝統的な山東料理で、いくら食べても胃にもたれないのが特徴だ。料理はコースのみで、料金はひとり8000円から。やや値がはるが、品数が多くて十分満足できる。石原慎太郎、小林亜星など、著名人のファンが多い、「知る人ぞ知るホンモノの味」といえる。

(文・写真/中島恵)


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